なあ、ぶーびーぶーびー。ちょっとさみしいんだけどよぅ。 隊長兼恋人は床に座り込み、プラモデルの制作にお熱を上げていてまったく自分の方を見ようとはしてくれない。脇腹をつついてみるも「ごめんちょっとまって」と視線はプラモ固定したままで返されてしまう。自分がロックに向ける情熱と同じようなものだろうか、と考えるがこれにはなかなか解せないままだ。実物が近くにあるというのに、しかもそれに乗ってさえいるのにどうしてプラモデルの戦闘機に熱を上げるのか。これは空馬鹿というより戦闘機馬鹿だ。 今いるのはブレイズの部屋。イスの腰掛けのところに腕を乗せて自分の顔を乗せてだるそうに座りながら部屋を見渡す。普通のものは少ないくせにプラモデルは結構ある。 「あー……ここどうしよかな」 なにやら悩んでいる様子だが、プラモデルに知識が皆無なチョッパーにはなにがいけないのかよくわからない。もともと細かいのは性に合わないタイプだ。故障かな? と思ったらとりあえず蹴って直せ、が自分の中では常識だ。レーダーがおかしくなったときだってそうやって直した(といっていいものかはわからないが)。グリムにため息をつかれたが、別に気にしてはいない。なぜなら前の隊長が言っていたからだ。『機体は消耗品』だと。 「うーん」 「ブービー。まだ時間かかりそうか?」 「うん、……ちょっと、まって」 何度目だよそれは、とため息をつく。恋人よりプラモにぞっこんな彼をみて少しさみしい。それにしても生き生きとした顔で作るものだな、と思う。まるで子供のように瞳を輝かせて、顔は悩んでいるのに楽しそうで。そんな表情がかわいいと思う。普通ならちゃちゃを入れるが、ブレイズの顔を見ているとそんな気分は薄れていく。さみしい気持ちもこっちを見てほしいという気持ちもあるが、今のブレイズの顔をずっと見ていたいという気持ちもある。 プラモデルに真剣に向き合って考えている姿は呆れる反面、ブレイズの可愛さにのめりこんでしまう。相も変わらずだるそうにしながらも悩むブレイズの横顔を見つめていた。 それから1時間くらいたっただろうか。ブレイズがようやく手をとめた。んーと腕を空にのばして「んー」と満足そうな顔をして筋をのばしている。 「ブービー、いいのができたかい?」 「ああ、結構満足いくもんができた」 どれどれ、とブレイズの手元をみてみるとそこにはF-14トムキャットの姿があった。 「これ、また作ったのか?」 ブレイズが作っている間、部屋にあるプラモデルを見て回ったがそこにはもう既に3機のトムキャットが飾られていた。ブレイズの手元にあるのを足せば4機。これはもしかして…… 「ああ。みんな分も作ったんだ」 そういってはにかみ笑いを浮かべたブレイズが愛しくなる。なんだこの仲間思いの隊長は。かわいらしいにもほどがある。ブレイズが立ち上がり3機のトムキャットがある場所に新しくできた4機目のトムキャットを置く。4機の戦闘機がトライアングルを作って編隊飛行している。一機一機指さして、これは自分、これはナガセ、これはチョッパーといい、最後にこれはグリム、と新しくできた機体をびしっと指した。 「うまいもんだよなぁ。流石だなブービー」 「へへっ」 みんなに言ってくる、と部屋を後にするブレイズを見送った後、これはナガセ、これはチョッパーと指さされた二番機と三番機を入れ替えた。 |